2008.07.24(Thu)
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2007.11.20(Tue)
『月光と海月』
月光の中を泳ぎて むらがるくらげを捉えんとす 手はからだをはなれてのびゆき しきりに遠きにさしのべらる もぐさにまつわり 月光の水にひたりて わが身はは璃のたぐひとなりはてすか つめたくして透きとほるのも流れてやまざるに たましひは凍えんとし ふかみにしづみ 溺れるるごとくなりて祈りあぐ。 かしこにここにむらがり き青にふるえつつ くらげは月光のなかを泳ぎつ 【 萩原朔太郎 】 生まれて初めて、この世で最も美しい詩だと思った。 多感な思春期真っ只中、偏った知識で物事を判別していた15歳の頃。 わずかな好奇心すら、そそられない国語の教科書に載っていた詩である。 生と死の狭間、危うげな感性をもてあそび、自分のアイデンティティを必死で探っていた陽炎のような季節。 人間はどこから来て、どこへ行くのか? 知恵熱に冒された痛いげな子供はそんなことばかり考えてたように思う。 毎夜、または白昼夢、安堵の時すら忘れ、しぶとくうなされるくらいならいっそ手短かな、ありあわせの答えを欲した私は、当時思い切って、つい大人の世界に生きる担任にSOSを出してみた。 「私は何故、この世に生まれてきたのですか? 私は何処へ行けばいいのでしょう?」 ノートに書き綴った、密やかな想いのたけは出口を求めて揺らめいた。 「そんなことは今考えるべきではない。もっと他に考えなければいけない事は沢山ある。例えば、お前はどこの高校に進学するつもりなのか?」 まるで、答えになってないよ、先生。 私の未来なんて、所詮、計るべき軸などありません。結局、何も答えられないんでしょう? 想定外の事態に備えて、正しいマニュアルはなかったのですか? たとえ、この世界の全てが夢で、誰かが吹聴した嘘だとしても、一見まともに思える答えさえあれば良いと思っただけなのに。 大人になるのは、やっぱり嫌だ。 こんなふうに、日々矛盾に異なり、さらさら波打つ心と心を一つにを寄せ合うことさえできないなんて。 そう、自分勝手に空しく確かめただけだった。 海がとても美しい町。私が生まれ育った故郷は。ほかにめぼしいものといえば、千里にまたぐ梅林の香り。 でも、それを深く愛した。 そして、ここにはずっといられないとも感じた。 幽玄な空の青さに目がかすんだ、あの頃は・・・ 真っ直ぐ見据えた海の向こう側、水平線がはるか遠くでなびく先に、確かな私の未来があると信じた。 永遠という名の楽園が存在するならば、きっとずっとそこにある。 あの時、必死で目指そうとしたもの、今は手に入れられているのかな? 今夜、浮かんだ三日月は、空気が澄んだ夜空の端々に、鋭い光を容赦なく放っている。 お前はあてどなく、どこまでも漂うのか? 海の闇を、雲の影を、ものともせずに撥ね退けて。 月はいつも、淡き過去への回想をうながす。 せわしい大都会の片隅でふと見上げてみれば、ほのかな灯篭。 人工的な電飾よりも、強く儚く光る浮遊物。 私が生まれる前の世界も、お前は全部知っている。 同じ過ちを繰り返す中で、人間は変われたかい? だとしたら、教えておくれよ。 真実を知りたがる、愚かな人間の行く先を。 鼻先であざ笑うお前に、小さき者の代表として、私は揺れぬ誓いを立てよう。 ここで、この地球で生き抜こうとしている報いのないあがきは、決してムダではない、と。 自らが心底切望したわけではないけれど、この世で生かされている意味に証を立てるまで、死にもの狂いで走り抜いてやる。 私という一つの人生を。 同じ強固な眼差しで、あちこちにはびこる限界に負けじと挑む友と共に。 Trackback List
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